side-P
午後の作業にも一区切りつき、職人達は中休みで煙草を吸いに出ており、
おだやかなの陽射しの中作業場はシンとしていた
一服を終えて一足先に仕事に戻った
なぜはやく戻ろうと思ったのかは覚えていない
建設途中の船と壁の間に人影を見た
物音がしたからでも気配を感じたからでもなく
ふいに目がその人物を追っていた
網膜から入った情報が脳に達するまえに
見なければ良かった、と思った
黒髪
均整の取れた身体
と
手足の長い好青年
薄闇の中ぴたりと寄り添った身体
音がしないのは自分の脳が正常に働いていないからだろうか
どちらともなくいとおしげに唇を食む
表情はよく分からない
後頭部に添えられたカクの手があやすように髪を弄び、首筋を撫で
ルッチの瞳は焦点がぼけて潤んでいた
一瞬のはずっだった光景は
圧縮され、克明に刻み込まれた
鉛を飲み込んだような、
重く冷たいものを腹に抱え
パウリーはその場を歩み去った
パウルッチ(カクルッチ)
続きます