『old days 2』
アリエス宮殿で起こった惨劇
その日ジェレミアは当直で警護にあたっていなかったが、騒ぎを聞いて駆けつけた頃にはもう全てが済んでいた。
挫折?
そうかもしれない
宮殿の警備体制が問われ、責任者ではなかったものの属していたジェレミアの経歴に傷は付いただろう。
しかし違うのだ
脳裏に浮かぶのは幼い皇子たちの無邪気に遊ぶ姿と、皇妃マリアンヌの穏やかな微笑み。
時折気まぐれにジェレミアを構いにやってきた小さな兄妹。
あの子たちは、外交手段の一つとして敵国へ送られることになった。
母をなくし、目と足を悪くした妹と共に、実の父親に祖国を追われた。
「納得しろ、ジェレミア」
枕元から穏やかな低音でたしなめられる。
部屋で二人きりになるやいなや、まくし立てる様に幼い兄弟たちの処遇について話し始めたジェレミアを、
突っぱねずに一通り聞いてやるあたりが懐の深さをうかがわせる。
ジェレミアとダールトンはかれこれ1年半の付き合いになる。
話せば長いが、要点だけ述べるとジェレミアが軍での昇進の足がかりにダールトンを選んだと言うことだ。
金銭の援助をしているわけではないからパトロンではないのだろうが、まあそのようなものだ。
話を聞きながら事を済ませてしまうところはさすがと言えよう。
くたりとうつ伏せている白い背中は、まだ育ちきらぬ骨格のたよりなさが美しい。
既に言葉は尽きていたが、頭の中はまだそのことでいっぱいなのだろう。
眠っているわけではないが、思考が同道巡りを繰り返す頭の重みからか深く沈みこんでいる。
皇妃の死後の周りの王族たちの反応は酷いものだった。
皇位継承権についてのあからさまな会話やルルーシュたちの今後についての下世話な噂話。
しょせん貴族など自分たちの事しか考えていない。
目の前で起こった皇子たちの不幸は、手を差し伸べるべきものではなく噂の種でしかないのだ。
加えて、彼らは最後の拠り所から引導をわたされてしまった。
「私には…陛下のお考えが…」
「その辺にしておけ」
皇族批判は許されない。皇帝陛下の意見は絶対なのだ。
あお向けてダールトンを見遣る表情はやりきれなさにゆがんだ。
「放っておけ、おまえが口出しできる問題じゃない」
「でも……っ…」
さらに言葉をつむごうとするジェレミアの口を塞ぎ、再び滑らかな肌に手のひらをすべらせる。
思いとは裏腹に若い体は簡単に反応を見せる。
―ルルーシュ様…
「ジェレミア」
ダールトンは着衣を整えながら、横たわったままの男に話しかける。
「おまえがすべきことが何か、よく考えてみろ」
うつぶせの、閉じたまぶたが開く。
「そんな所でぐずぐずしていても誰も浮かばれんぞ」
身支度を終えてドアの前に立つと、白い裸身がベッドの上で身を起こしていた。
「お前は何のためにここでこうしているんだったか?」
ふ、と笑うと最後の問いを残してダールトンは部屋を出て行った。
そのまま迷わず純潔派の道をひた走るジェレミアです。
何ともいえないジェレミア擁護SSですが、まあこういうオレンジがいてもいいやと
思ってくださる方がおられれば幸いです。
すみません、石投げないで下さい。
パトロンなダールトンも描きたかったんです。
あ、擁護してない…。
↓メモ帳抜粋
権力志向の若ジェレが軍内部で捕まえたパパがダールトン
ダールトンはダールトンで妻子持ちでそろそろ仕事の責任も重くなってきて若い軍人を物色してた
(軍内及びそのアカデミー内で男色が当たり前のように横行)
酷い脳内設定…うん、ごめんなさい。