『old days』














6月の晴れた日、ジェレミアはアリエス宮の警護にあたっていた。
持ち場は広大な庭の一角で、そこからはマリアンヌ皇妃が見守る傍らその皇子たちが戯れている。
この宮殿の警護の任は名誉と、そして責任のあるもので
ジェレミアも最初は緊張して硬くなっていたが、
二、三日もすると、子供たちの無邪気に遊ぶ声がするからか肩の力が抜けてきたようだ。
今まであまり考えたことは無かったが、自分は子供が好きだったのだと自覚する。
声変わりする前の少年たちの声と幼い少女の透明な歓声。
直立不動で警護にあたっている顔は優しげで、かすかに笑みすら浮かんでいた。


少し離れた場所で蝶か何かを追っていた子供たちの中のひとりがこちらを見ている。
―ルルーシュ様?
ルルーシュのほうもジェレミアが気づいたと分かったのか、こちらへと近づいてくる。

つやつやとした黒髪の少年はジェレミアのみぞおちほどしか身長がない。
くりっとした紫色の目で上目遣いに見つめている。
少し眉根を寄せて。
「…ルルーシュ様…?」
何か粗相があっただろうか…
そもそも警護の者が任務中に皇子に口を聞いてもよいものかと思案する。
少し神経質そうな少年はジェレミアを観察しているようにも見える。
ジェレミアがもう一度問いかけようと口を開きかけたとき、やっと小さな声が返ってきた。

「あの…」

「?」

「…それ」

それ、と少年が指差したのはジェレミアの後ろ髪。

「…これ、ですか?」

結んだ紐の先にちょろりとのびた髪をつまんでみせると、
こくりとうなづいた。


「さわってもいい?」


思わぬお願いにジェレミアの目が丸く見開かれる。
きょとんとした顔のままで承諾の返事をし、
どうぞ、とひざをついてかがむと目の高さが同じになった。


正面から向かい合ったまま、少年はそっと髪に手を伸ばした。
幼い二の腕は白く、たよりない形をしている。
引っ張られないか不安だったが、逆に優しくふわふわと撫でてくる感触がくすぐったくて
どうしたらよいものかと余計に戸惑う。
子供のにおい、焼き菓子の甘い香りがした。

―お兄様、ずるい!

鈴のような少女の声がして、ルルーシュの体が離れた。
妹のナナリーが向こうからかけてくる。

「ルルーシュ様?」

同じ高さから、また見つめられて今度は何故か胸が苦しくなった。
もう眉間にしわは寄っていない。
興味津々、と言ったところだろうか。

「!?」

突然小さな体が飛び込んできて、細い腕が首に回り抱きしめられる。
いきなり何が起こったのかと目を白黒させているうちにもうひとつ小さなかたまりが飛び込んでくる。

「お兄様ずるい〜」

「うっ…ナナリー様…?」

「待って〜」

そう聞こえたかと思うともうひとつのかたまりが遅れて飛び込んできた。

「クロヴィス様?」

「あらまあ」
全員集合と言わんばかりにジェレミアにすがりついた子供たちを追ってマリアンヌ皇妃がゆっくりと歩んでくる。
立て続けに飛び付かれ、子供の力とはいえ力いっぱい抱きしめられて、
嬉しいような苦しいようなで困った顔をしているジェレミアを助ける者はどこにもいなかった。















ピクドラの後ろ髪付きジェレミアより捏造。
もっと権力志向派だよとかそういうことは捏造なので気にしない。
描いてないけどルルは結構セクハラ的な事を考えている(ごめんなさい)
後ろ髪を触らしてもらってもギューと引っ張らないあたりまだスレてないというか←偏見
子供にかまい倒されるジェレミアと助けてあげない皇妃のお話。