子犬のワルツ
機体と同じ白いパイロットスーツ姿でランスロットの整備をしている少年を呼んだ。
茶色い髪は少し癖毛で、額を覆い幼さを助長する。
実年齢よりも若く見えるのはイレブンの特徴だったか…
「あなたは…」
驚きに眼を丸くしてこちらを見ている
何やら蒼い髪の技術者に説明を受けるとこちらに人なつっこい笑みを向けてきた
その笑みに息を呑んだ
亡き殿下殺害の容疑をかけ
理不尽な尋問を繰り返した上に死刑台に送ろうとした自分に対して笑いかける…
困惑しているともうすぐ傍まで来ていた
「お久しぶりです、ジェレミア卿」
かげりの無い、明るい声色
対して自分は…後ろめたい思いに視線を落として答える
「礼を言いに来た……っな!」
言い終わらないうちに両手を握られていた。
混乱しているとぎゅっと力を込めて握られる。
熱いてのひらに肩を強張らせ、視線をさまよわせた
スザクの目がジェレミアの、少しうっ血した唇の端に止まる
「親衛隊の人たちに何かされたんですか?」
数日に渡って取調べを受けていた。
往々にして軍の取調べというものには暴力がついてくる。
だからといってこの少年に対してしたことが正当化されるわけではない
「僕なら…」
ふいに声を掛けられて思考が中断される。
「僕なら…貴方にそんなことはしない」
黒目の大きい、子犬のような目で見上げられ
視線を外すこともできずに手を握られたまま…
自分はなさけない顔をしているのだろう
「クルルギ…?」
「僕なら…」
しかしそもそもなぜ手を握られているのだったか…
「僕ならもっとやさしくしてあげるのに」
さっきまできらきらとしていた大きな瞳が混沌を湛え、鈍く光る
「…え…」
得体の知れない恐怖にビクリと震える
「スザクく〜ん」
蒼髪の技術者が呼んでいる
目を伏せ、名残惜しそうに手を解く
なぜか…ほっとして息をついた
「それじゃあ…」
言いながら解いた手でするりと私の腰を撫でた
また…と脇を通り過ぎて「は〜い」と無邪気に駆けてゆく少年
「…」
―何だったんだ…
早鐘を打つ心臓。
目頭を押さえる手が震える
そして
自分が少し涙ぐんでいたことに気付いた。
笑い飛ばしてくれませんか…(土下座)
スザジェレ第一弾、鬼っ子スザクな話でした。ええ、Sキャラだと思うんです。
カオスな瞳のスザク。
色気とムラっ気とサドっ気の入り混じったドロドロした感情がこもってます。
去り際に尻をひと撫で。