昼を少し過ぎて部屋に帰ると珍しいことにスカーが台所でなにやら作っていた
「ただいま、帰りましたよ」
そう声をかけるとスカーは ばつが悪そうな顔をした
「何作ったんです?」
「…」
肩越しにフライパンを覗き込むとよく分からないかたまりが見えた
「たまごやきですか?」
スカーが何も言わずにフライパンを返すと
ぺそっという間抜けな音をたててそれは皿に移された
スカーは仏頂面でたたずむばかりなので
キンブリーはスプーンの背でかたまりに触れてみる
てしてし、と叩くと
あいまいな色をしたかたまりは微妙な弾力でもよもよとふるえた
物体の妖しげな弾力に目を丸くするキンブリーとは対照的に
スカーはますます憮然とする
「何です?これ」
「…」
スカーは自分としてもあまりにもあんまりな手料理の様子に
さすがにヘコんでいた
「……(つまり、家族と暮らしていた頃は「男子厨房に入らず」で、
放浪中は料理をする余裕なんか無かったわけですね)」
キンブリーが無言で要約する
ぱく
「オイ…」
あまりにも唐突な行動だったのでスカーは止めそびれた
スプーンを反してひとくち
劇的な反応はなく咀嚼する様子を見て
スカーも口に運ぶが、やっぱり、と首を振った
「なれないことをするものではないな」
どうしようもない、とため息をつく
「おいしいですよ?」
邪気無くスカーを見るキンブリーに少し驚いて眉を上げる
まさか気を使っているのか
「味がしないだろう」
薄味というよりほとんど無味なのだ
「私はこういうあたたかい料理が好きです」
もう食わなくていい、と言う前に
ほんのりと横顔が微笑んだ。
「おいしいです」
そう言う様子が驚くほどしあわせそうで
不覚にも
この愛しい存在を抱きしめ首筋に顔を埋めて
額にバッテン傷と褐色の肌、加えて特徴的な眼の色をとくれば
相当目立つわけで、追われる身としてはのんびり何かをすることなんてそうそう
なかったんだろうなあと
←現在更に目立つふたり組みだということはこの際無視
いつ書いたんだろう…データが残っていたのでポチっとupしてみました。
鰤の料理上手説を超支持(実験感覚で「練成」とか言いそう)