a performing alchemist














デビルズネストのバーカウンターで器用にカクテルをこさえている男、ゾルフ・J・キンブリー。
彼は脱獄犯だ。
寝起きしている従業員のほとんどが合成獣というこの店の中でさえ、キンブリーの存在は異色だった。
まあたしかに見かけだけならワニやらトカゲやらの合成獣の方がよっぽど怖いのだが、
彼らは元が犯罪者なわけではなくて傷痍軍人だから、
本当に悪い奴はキンブリーと、あとはもしかしたらボスのグリードくらいしかいないのだった。
風変わりで近づきにくい雰囲気も相まって、最初キンブリーと親しげにする者はいなかった。

しかし、「バーテンがいないバーなんてバーじゃありません」とかなんとか言い出し
パラパラと本を捲りながらカクテルの作り方を覚えたので、ときどきリクエストをするようになった。
頼めば簡単な料理も出してくれるというこまめさがウケて何となく酒場になじんでいった。



休みの晩、いつの間にやら酒盛りが始まって、
頼まれてカクテルを作りながら、キンブリーも一緒なってにしこたま酒を飲んだ。

酔っ払いのノリで一発芸大会が始まる。

「渦潮やりまーす!」

渦潮とはビール瓶を逆さにして回転させ瓶の中に渦を発生させて高速で飲み干す一気飲みのことである。
マンガのように、まるで滝のごとく流れ出す液体を飲み干す様は圧巻だ。
最後の一滴まで飲みつくすと喝采が送られた。
ひとつ済むとまた次、と端から次々槍玉に上げられていく。
皆酔っているのでネタは何でもアリだ(あんまりくだらない下ネタは後ほどマーテルにどやされることになる)
珍しく酔って目の据わったドルチェットが

「ウィリアム・テルやります」

と言ってリンゴをのせる相手を選び始めたときは、さすがに皆止めたが。
腕に問題があるわけではないが、ドルチェットの必殺の一撃を頭上で受け止める勇気はさすがに無かったようだ。
風圧でハゲると思ったのかもしれない。
そうこうしている内にキンブリーの番が来た。
周りは皿を回すとか歌って踊るとか、そういうことを予想して見守っていた。

「ここにいるウルチさんが、一瞬にして消えます」

消失マジックのようだ。
白皙の頬を染めて嬉しそうに口上を述べる様子は何だか可愛らしい。

「はいっ」

皆が見つめる中キンブリーは刺青の入った手のひらを、ぱん、と打ち合わせた。




瞬間、全員がキンブリーが何であったかを思い出した。




「やめ――――!!!」




すんでのところで事なきを得たが、危うく爆弾になりそこねたウルチはショックでそのまま睡眠状態に入った。




冗談じゃないですか、と言ってふくれるキンブリーだったが、本当に冗談で人を殺しかねない爆弾狂のため全くシャレになっていなかった。


以来キンブリーが微笑むと爆破まで〜秒、というのが定説になったとかならなかったとか…















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