早々に病院を抜け出して知らない街をフラフラする
何日寝ていて傷の具合がどうなのかよく分からないが
いつまでもあそこにいたのでは戦えないし。
額に傷のイシュバール人を捜し求めるように
夕闇の中を歩く
あの時殺しに来たと思ったのに
どういうわけかわたしを撫でて出て行った傷の男に
なぜだか会いたくて
思い出すと自然と笑みがこぼれる
おかしな気持ちだ


ほどなくしてスカーは現れた


「ここじゃ難なので」
友人のような気安さで場所を変えようと言う
「移動しましょうか」
指で指し示す場所はホテルの屋上、と言ったところだろうか。
スイ、と建物に姿を消す。
それを追って屋上に出ると爆風で視界が奪われた
伸びてくる腕
月の文様が浮かび上がる手のひら
触れる前に手首を掴み腹を蹴る
確かな手ごたえにそのまま粉塵が収まるのを待つ
傷口が開いたのか脇腹が真っ赤に染まっている。
「終わりだ」
壁際に放ってぽつりと呟く。
あっけないものだ。
引導を渡そうと近付くと
ゆっくり顔を上げ、こちらを向いてニコリと笑った。



「誰かにお見舞いをしてもらったのは初めてなんです」



心がザワリと音を立てる



「だから、貴方の好きな方法で死んであげます」



「右手と   左脇腹   と    」



驚くほど優しい顔で
きれいに笑いながらはぜる身体



「次は  」
「…もういい」



あちこち足りなくなった身体をあらん限りの力で抱きしめて
あの日失った者を想った



俺の全てを奪った悪魔は
一度ぱちりとまばたきをすると
心底幸せそうに笑って肩に頭をあずけた







温度を失ったからだを抱きなおしてさくりと髪を撫でた